中学生小説

思い付きで書いていきます。構想練ったりしていないのでコロコロ書き換えます。ご了承下さい。コメントでアドバイスくれたら嬉しいです。

ネカトイア 最終章 地獄

「じゃあ明日は大学に行くよ」

と言うと、ひろは悲しそうに言った。

「今さら合わす顔がないよ」

ひろは元カノと寄りを戻した方が幸せなんだ。
『これでいいんだ』と私は自分自身に言い聞かせた。
その日は眠れなかった。

次の日、朝起きて私達は大学に向かった。
私は一言『頑張ってね』と言い残し家に帰った。

帰り道で私は、

「これで終わりか」

と呟いた。
元気にはしゃいでいる小学生達が目に入った。
私もあれぐらい元気だったらな、羨ましい。
家についてからも私は考えていた。
ひろはもう私がいなくても幸せになれる。
ひろと出会えて本当に毎日楽しかった。
多分ひろは私に感謝しているだろうけど、感謝するのは私の方だ。
もう人生悔いはない。
そう思っていると、玄関で物音がした。
玄関に行くとひろが帰って来ていた。
私は驚いたが、聞いてしまった。

「おつかれさま、どうだった?」

ひろから返事はなかった。
当然だ、上手くいったのなら帰ってくるはずがない。
私は何を聞いているのだろう。
この時、私は心の中で喜んでしまっていた。
最低な女だ。
これでもう少しひろといられるんだと思った。
しかしその夜に強烈な胸の痛みで呼吸が止まりそうになり、私はもう長くないのだなと感じた。

次の日からしばらくはひろと二人で色んな所に遊びに行った。
周りからはカップルと思われてるのかな、なんて思いながら本当に楽しい時間を過ごした。
ひろと二人でいる時間は幸せだった。
ひろの事が本当に大好きになっていった。

ひろは仕事を始めていた。
仕事も上手くいっているみたいだ。
最近は帰ってこない日もある。
一人でももう不自由なく暮らせるんだろう。
私の時間はない、本当はもう立っているだけでもしんどい。

「あと私がひろにしてあげられる事は…」

と呟いた後、ある女の子に連絡して会いに行った。

「会うの久しぶりだな」

そう言って、待ち合わせ場所で待っていると彼女が来た。

「なぎ?久しぶり!」

そう言って声をかけてきた彼女の名前は【みさき】。
私の幼なじみで本当に可愛くて凄く良い子だ、私も信頼している。
今は彼氏がいない。
彼女ならひろとお似合いだ。
一人の男の子と会って欲しいと頼んだ。
みさきはいいよと言ってくれたが、その事よりもどうやら私の体調を心配しているみたいだ。

「またね」

とみさきが言い、私達は解散した。
私は家に帰るとすぐひろに向かって

「会って欲しい、女の子がいる」

と言い、みさきの写真を見せた。
ひろは最初は戸惑っていたが、しばらくして神妙な面持ちで何かを考えたあと口を開いた。

「僕はさきが好きだ。さきと居れたらそれで十分なんだ。そんな事したくない」

私はとても嬉しかった。
同時に悲しくなった。
私も『好き』と言いたかった、でももう私は…
自然と涙が出てしまったが、気持ちを押し殺し一言。

「ごめんなさい」

それ以上は何も言わなかった。
ひろは家を出ていった。
もう何もかも終わった。
もしもひろともっと早く出会えていたら、私がまだまだ生きられたなら。
神様が本当にいるのなら、これは私への罰なのだろう。
私のせいで人生が狂った人は沢山いる。
私が幸せなんて望んだら駄目なんだ。

しばらくして、私は入院していた。
全身が痛い、体が言うことを聞かない。
一人では生活する事は無理だった。
もう死んでもいいんだけどなと思っていた。

「おはよ」

そう言って病室に入ってきたのは、みさきだ。
頻繁にお見舞いに来てくれている。
そう言えば、ひろとみさきは無事に付き合ったみたいだ。
毎日のろけ話をしている。
何故かみさきはひろの事をらいと呼ぶが、そこは深く突っ込まず、私もみさきの前ではらいと呼んでいる。
二人が幸せそうで私は嬉しい。
今日はみさきに頼もうと思っていた事がある。

「みさき、私からの最後のお願い!」

と言い、私は封筒を渡した。
みさきは驚いた表情で、

「なにこれ?ってか最後とか言わないでよ」

封筒の中身は私が今まで貯めてきた全財産の入った通帳とカードと暗証番号の書いた紙だ。
私は言った。

「このお金でらいくんと幸せになって」

みさきはしばらく黙ったまま何かを考えているようだ。
私は続けて言った。

「私には家族もいないし、みさきしかいないから、今まで仲良くしてくれてありがとう。私の分まで幸せになって」

これは半分嘘だ。
本当はみさきだけじゃない、ひろの幸せのためだ。
私はみさきを利用しているのかもしれない。
でもみさきにも幸せになってほしいというのは事実だ。
今日までこんな私と仲良くしてくれた事を本当に感謝している。
みさきは泣きながら口を開いた。

「ほんとうにありがとう、私の方こそありがとう、絶対幸せになる」

次の日からも、みさきはお見舞いに来る度にひろの話をしていた。
ひろと遊園地、水族館、動物園、旅行に行ったみたいだ。
ひろは仕事を辞め、企業したみたいだ。
会社は上手くいっているみたいだ。
もしも、私がひろの隣にいられたら幸せだったんだろうなとは思うけど…仕方がない。
私の望んでいた事だ。
本当に良かった。
私が好きになった最初で最後の人が幸せになってくれて、私はもう後悔はなにもない。

しかし、最近になるとみさきは来なくなった。
理由はすぐにわかった。
病院の共有スペースでテレビをつけると、ひろと女優が交際中と報道されている。
そんなニュースを見ていると、隣から話し声が聞こえた。

「私あの女と大学の時も一緒だったよ」

話はまだまだ続いた。

「でもあの女、大学の時ミスコンだし美人で有名だったけど、黒い噂でも有名だったよ」
「あの女が友達に言ってたらしいけど…《付き合ってる男から他の男使って大金取った》って」

その言葉を聞いて、私は嫌な予感がした。

「なんでも付き合ってた男は小中学校の時いじめられていたらしくて、その話を聞いてからその子をいじめてた男を使ってお金を取ったらしいよ」
「酷いことするよね」

私はその場から離れようと席を立ち、すぐに部屋に戻ろうとした。

「その彼氏の名前なんだったかな~」

「たしか、ひ…」



時は経ち~現在~

夜の街はあの時の様にカップル達で賑わっている。
しばらく歩いていると、ある男性とすれ違い様にライラックの香りがした。
懐かしい香りだ。
私は咄嗟に振り返り、声をかけた。

「おにーさん」

男は振り返った。
私はとても驚いたが、続けて言った。

「久しぶりだね、大分変わったね」

テレビ越しでは見ていたが、やっぱりすごくかっこよくなっている。
服装もブランド物だろう、つけている時計も高そうだ。
なんて思っていると、ひろは

「誰かさんのお陰でな」

と言った。
私はひろが成功して嬉しいはずなのに、なんだか悲しい気持ちになった。







最後にひろは

「さき、今までありがとう」

と言って立ち去った。
私は泣き崩れた。
私の名前はさきじゃない、後悔しかない。
ひろが幸せになればいいなんて、本当は綺麗事だ。
本当はなぎとしてひろと幸せになりたかった。
戻れるのなら戻りたい。
私は最後まで変われなかった。
本当に思っている事は何も言えなかった。





そのまま意識がなくなった。

ネカトイア 第8章 別れ

誰かと寝たのなんていつぶりだろうか。
ひろの寝顔は以外に可愛いかった。

「ねえ、起きて、早く起きて」

そう言って、ひろを起こそうとするがなかなか起きない。

「早く起きろ」

と顔を叩くと起きた。
ちょっと強く叩きすぎたかなと心配になった。

「早く用意して、出掛けるよ」

そう言って私は外に出た。
ひろを幸せにしようと思ったけど、本当に私にできるのだろうか。
その後ひろが出て来て、まずは借金の返済をしにいった。
借金の返済が終わるとひろの表情が少し和らいだ気がした。しかし、これで終わりではない。ここから始まるんだ。

私の行きつけの美容室に向かった。

「髪の毛切るの?」

「ひろが切るんだよ、ぼさぼさだし、ずっと切ってなかったでしょ」

そうして美容室に入り、奥にいた担当美容師さんの方に行くと、

「なぎちゃん、今日はどうしたの?」

「あの子の髪の毛良い感じにしてほしいんだけど…」

「なぎちゃん彼氏できたの?あれだけ彼氏作らないって言ってたのに」

「彼氏じゃない」

「あら、そーなの残念」

と言いながらニヤニヤしている。
私は終わったら連絡してと言い店を出た。
今から何をしに行くかと言うと、ひろへのプレゼントを買おうと思う。
でも男の子にプレゼントをあげるなんて初めてで何をあげたらいいかわからないが、デパートに向かった。
初めにジュエリーショップへ行くと、

「今日はどのような物をお探しで?」

「プレゼントです…」

「彼氏ですか?いいですね、それだったらこちらのペアなんてどうですか?」

ひろはこういうの付けるの嫌がりそうだしな、と思って店を出てデパートを歩いていると、ある香水が目に入った。

「これ、私がつけてたの同じだ」

そう言い、手に取ったのはライラックの香りの香水である。
ひろつけてくれるかな、つけてくれたら嬉しいけど。
そう思い、その香水を購入した。
そして美容室に戻ると、ちょうどひろから終わったと連絡があり、ひろが店から出てきた。

「すごくかっこいいじゃん」

私は思わずそう口にした。実際ひろは凄くかっこよくなっていたが、ひろは照れ臭そうにしている。

次に向かったのはアパレルショップだ。
ひろは背が高いしなんでも似合いそうだと思い、服を何着か選んで、試着してもらった。
やっぱり似合っている。本当に見違える位かっこいい。
そのまま服を何着レジに持って行った。
ひろは申し訳なさそうにしているが、私は誕生日プレゼントと言って香水も渡した。
ひろは何か分かっていないみたいだったが嬉しそうにしている。
ひろはこれから少しずつ変わっていくんだ。


数日間ひろの好きな物や、好きな事など色々話した。
一緒にテレビを見たり、ご飯を食べたりするこの時間が幸せだった。
夜になり考えた。
こんな時間一生は続かない、私には時間がない。
早くひろに幸せになってもらわないと、ひろの隣にいるべきなのは私ではない。
私はまた泣いていた。

次の日、私はひろに女の子の扱い方から、落とすための仕草、言動、様々な事を教えた。
そして、私は手始めに一人ナンパして成功してくるように言った。
私達二人は人通りの多い繁華街へと向かった。
人通りの多い所に着くと私はひろから離れて、遠くから見守った。
ひろは中々声をかけない。
私は心の中で『がんばれ』と思い続けた。
しばらくして、ひろは一人の女性に声をかけていた。
無視はされていない、会話は続いている。
携帯を取り出し、連絡先を交換したようだ。
そこからすぐに二人目に声をかけていた。
ひろに私は必要なくなる日も近いかもしれない。
私は遠目から見ていたが、直視できなくなっていた。
自分から言ったのに、ひろが他の女の子と楽しそうに話しているのが耐えられない、私は最低な女だ。
私はひろを置いてその場から離れた。
そのまま家に帰り、私は家で一人泣いていた。
広い部屋に私一人、前まではこれが普通だったのに、今は耐えられない、ひろの顔ばかり浮かび上がる。

夜になり、ひろが帰って来た。

「おつかれえ、どーだった?」

「あんなに上手く行くとは思わなかった」

「私の事信じてなかったの?」

「ちょっと」

「なにそれ」

「でも、自信がついたよ」

そんな会話の後、私はさっきまでの悲しい気持ちを隠し笑顔で言った。

「よかった」

ひろといる時間が辛くなり、私は家を出た。
誰もいない公園のベンチで、これから先どうすればいいか考え続けていた。
そういえば、ひろは元カノとの思い出をよく楽しそうに話していた。
元カノとよりを戻したらひろは幸せになるんじゃないか。
そう思い、家に戻りひろに言った。

「元カノとより戻そうよ」

ネカトイア 第7章 幸せ

クリスマスだし、一人で歩いている男は全然いないなと思っていると私は一人の男を見つけた。
見た目は少し年上、髪の毛はぼさぼさでヨレヨレのスーツ、下ばかりを向いて歩いている。
給料を貰ったばかりなのか、札束の入った封筒を握りしめている。
あまりお金を持ってなさそうだが、私はその男にいつもどおり声をかけた。

「うわっ」

男はとても驚いた表情でこちらを見た、照れ臭そうにしている。
あまり女性に慣れていないのだろうか。

「おにーさん、びっくりしすぎ」

笑顔でそう言った。続けてお金がないからご飯を奢って欲しいと伝えた。
男はすぐに返答した。

「いいよ、なに食べたい?」

男は皆同じだ、今まで断られた事はない。
どうせこいつも下心しかないんだし、痛い目に合わせてやろう。

「え、良いの?おにーさん優しい!お寿司がいいー!」

そんな私の反応を見て男はニコニコしながら頷いている。
はっきり言って気持ち悪い。
男は道中、興味深そうにこちらに質問をしてきた。
年齢や職業、いつもこういう事をしているのかだとか。
正直この手の質問攻めしてくる男は鬱陶しい。
名前も聞かれたが、【さき】と答えた。
話している間にお寿司屋さんについたみたいだ。
ここは結構高いところだ。
一応ここでも大丈夫か聞いたが、聞くまでもなかった。
男はどうしてこう見栄をはるのか、ここに入ったら、貰ったばかりの給料がほとんどなくなると言うのに。
そう思ったが店に入った。
男は店内を見渡している。

男はいくらでも食べて構わないと言った。
本当に見栄はりな人なんだな、私はそう思った。
どう見てもお金持ちではない。
ここを奢れば私と寝られるとでも思っているのだろう。
私はこの店にはよく来ているので、いつも通りに注文していく。
男も同じ物を頼んだ。
やはりこういうお店に来るのは初めてなのだろうか。

私は食べ終わり、ご馳走さまと言った。
会計の金額を見たときの男の表情が楽しみで、顔を見上げるとやはり落ち込んでいる。
そうして店を出て、ごちそうさまと伝えた。
この後この男は何と言って私を次の場所に誘うんだろうかと考えていると、

「気をつけて帰ってね」

と言うから、私は驚いた。
こんな男は初めてだ。
連絡先すら交換していないのに、ただ奢らされただけなのに笑顔でこちらに手を降っている。
私はつい言ってしまった。

「おにーさん、本当に男?」

「男だし、それにお兄さんお兄さんって一個下だよ」

話を聞くと明日が誕生日らしい。
クリスマスの次の日に誕生日と言うことは誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントを一緒にされていたんだろうななどと思った。
そんなことより年下と言うことに驚いた。
見た目や落ち着きようで年上だと思っていた、騙された。
年下に奢られたのは人生初めてだ。
何だか気が悪かったので、私は男を家に誘った。
私は何をしているのだろう。
男を家に呼ぶのなんて初めてだ。
私はこの男に興味が湧いたというよりは、この男の事は何か頬っておけない気がした。
帰る道中に誕生日だし祝ってあげようと思い、コンビニでケーキを買った。

私が家の前で足を止め、男に着いたと伝えると凄く驚いていた。
私は驚いた表情が少し可愛いと思ってしまった。
部屋に入るとソファーに座った。
男はぼーっと突っ立っている。
女の子と二人きりだと言うのになんだこいつは。
私は隣に座ってと合図した。

「目瞑って」

私はそう言い、コンビニで買ったケーキを出した。

「開けていいよ、誕生日おめでとう」

そう言うと男は号泣しはじめた。
私は男が泣いているのを初めて見たので戸惑った。
どうしたらいいんだろう。
大丈夫かと聞くと、男は泣きながら必死に首を横に振っている。
始めはそんなに嬉しかったのかと思ったが、どうやら違う、なにか訳があるみたいだ。
私はこんな時どうして良いのか分からず、男を優しく包み込んだ。
しばらくして、

「私でよければ聞くよ」

と言うと、男は話し出した。
その時になって初めて名前を知った、【ひろ】と言うらしい。
小中学校はいじめられて、当時のいじめっこに再会して酷い目に会わされ、頑張ったが限界が来て、死のうと思っていたみたいだ。
続けてひろは言った。

「本当は死にたくない、まだまだ生きたい」

その言葉を聞いた時、私は自分とひろがどこか重なった。
お金はあるが生きられない私と、お金がないから死のうとしているひろ。
私達は全く逆のようで、実は似ているのかもしれない。
私の目から自然と涙が出ていた。

「偉いね、今まで一人で頑張ったね、ちょっと待っててね」

そう言いクローゼットの金庫にお金を取り行き、持ってきたお金をひろに渡した。

「こんなお金どうやって…」

ひろはそう言った。
それは答えられない。
でもこのお金があればひろは生きて、やり直せる。
なぜかこの時私はひろを変えてあげたい。
ひろの成功するところを見たい。
ひろに出来ることは全部してあげたい。
ひろを幸せにしてあげたい。
そう思った。

「ありがとう!これから頑張って働いて絶対返していく」

「そんなの良いから、これから私の言う事を聞いてくれない?」

ひろは顔色が悪くなり下を向いている。
私は断られたるとどうしようと思ったが言った。

「じゃあまずは今日の昼に私と出掛けて!」

ひろはきょとんとした表情で私を見ている。
少しして分かったと言ってくれた。
とりあえず今日はもう寝よう。

その日ひろはすぐに寝ていた。
本当に私にひろを変えることはできるのだろうか。

ネカトイア 第6章 始まり

私の名前は【なぎ】、病室の花瓶には綺麗なマーガレットが活けられている。
私はもう死ぬだろう、これでも長く生きられた方だが、後悔しかない。
もしもあの時に戻れるのならと何度思った事だろうか。

死ぬならあの人と出会った場所でと思い。
私は最後の力を振り絞りクリスマスの夜に病院を抜け出し、夜の街へと足を運んだ。


~5年前~

「なんで私が…」

そう呟いた私の名前は【なぎ】。
私のこれまでの人生はこうだ。
中学卒業後にすぐに家を出た。
理由は家がどこよりも居心地が悪かったからだ。
一人では家を借りる事ができなかった。
でも泊まる家には困らなかった。
私が夜一人で外を歩いていると、男はいくらでも声をかけてくからご飯と泊まる場所に困る事はなかった。
私は男を利用して生きていた。
生きるためには仕方がない事なんだ。
18才になると寮付きのキャバクラで勤め始めた。
働き始めてすぐに私はNo.1になっていた。
お金はありあまるほど出来た、高級タワーマンションにも住むようになった。
男の扱い方なんて簡単だ、私に落とせない男なんていない。
男からお金を引っ張る方法も熟知していた。

そして月日が立ち現在にいたる。
咳が止まらない、胸が痛い、息がしずらいので、病院に行くと肺癌で手術不可の段階だと言われ、あと五年生きられる可能性が20%未満と言われた。
もう一度言うが、

「なんで私が…」

それからは私は仕事を辞め、入院はせずしばらく家に引きこもっていた。
世の中が憎い。もっと生きたい。
私は周りの人間も不幸にしていこうと思い、夜の街へと足を運んだ。
そごで男を見つけては、最初はご飯を奢ってほしいだの、友達との予定が潰れて暇だの何だのと言って近づいた。
そこで落として。
二回目からは会うのに金銭を要求した。
三回目には病気になったと言い医療費を要求した。
四回目には最後にしたいことがあると大金を要求した。
そうやって私は何人もの男を騙し、使いきれないほどのお金手にした。
今の私にお金なんて無駄だ、でも私は男からお金を騙し取る事で生きていると実感していた。

クリスマスの夜、いつものように夜の街へと足を運んだ。

ネカトイア 第5章 逆転

僕は耳を疑ったが、さきの顔は真剣だ。

「じゃあ明日は大学に行くよ」

突然なにを言い出すんだ。元カノには別れを告げたんだ。
僕はさきが好きなんだ。そう思っていると、

「言うこと聞く約束でしょ!」

僕は逆らえなかった。
さきの言うことには逆らえないし、僕が変わる事を辞めたらさきとの関係も終わる気がしたからだ。
この時僕がさきに好きだと伝えるべきだったのだろう。
伝えていたら何かが変わったのだろうか。
しかし言う勇気はなかった。
僕は無力だ。
その日は不安で眠れなかった。

次の日、朝起きて僕達は大学に向かった。
さきは一言「頑張ってね」と言い残しどこかに消えていった。
したくないけど、するしかない。
彼女がいつも空きコマにいる場所はよく知っている。
行くと、実際彼女はいた。
近づくと驚いた表情で彼女の方から声をかけてきた。

「え、もしかしてひろ?なんで?」

本当に久しぶりだが、元気そうで良かった。

「あの時、連絡返せなくてごめんね」

そこから僕達は他愛もない話をした。
僕は彼女の顔を見ると楽しかった思い出が蘇り、聞いてしまった。

「彼氏は出来たの?」

すると彼女は少し黙ってから、口を開いた。

「出来たよ」

僕はショックだった。まだどこかで期待していたのかもしれない。
しかしそこから話は続いた、

「でも実は彼氏がちょっと…」

僕は彼氏の愚痴を聞き続けた。
今からこの子を口説く。さきに逆らえないから仕方なくだ。そう思うようにしていたが、本当はまだ未練があったのかもしれない。その日はそれで別れたが、連絡が頻繁に来るようになった。
家に帰るとさきは帰っていたみたいで、

「おつかれさま、どうだった?」

僕は返事をしなかった。
それが原因かは分からないが、次の日からしばらくはそういった話はなくなった。二人で色んな所に遊びに行った。
周りからはカップルと思われてるのかな。なんて思いながら、本当に楽しい時間を過ごした。
さきと二人でいる時間は幸せだった。
さきの事が本当に大好きになっていった。

僕は仕事を始めていた。
さきのおかげだろう、人の扱いが上手くなっていた。
仕事でもどんどん成績を上げていった。
一人でももう不自由なく暮らせるだろう。
でも僕はさきと一緒に居たかったが、僕とさきの関係は一体何なんだろうと思い始めるようになった。


しばらくしてさきから、

「会って欲しい、女の子がいる」

と言い可愛らしい女の子の写真を見せてきた。

「明日この子と喫茶店で待ち合わせしているから行ってね」

「会ってどうするの?」

口説きなよ」

その言葉で僕はとうとう言ってしまった。

「僕はさきが好きだ。さきと居れたらそれで十分なんだ。」

するとさきは泣きだし、しばらくして一言。

「ごめんなさい」

それ以上は何も言わなかった。
もう何もかも終わったと思った。
俺は正直どうでもよくなっていた。
たださきと幸せに過ごせればそれで十分だったのに、他の女を口説かせたり、元カノと会わせたり、さきは僕の事が好きじゃないんだろう。もうどうでもいい。
俺は家を出た。

次の日、喫茶店に行くと写真の女が待っていた。
正直こんな女はどうでもいい。
しかし俺は、【らい】と名乗り女を口説いた。
俺に口説けない女はいない、女は利用するものだと自分自身に言い聞かせた。
女が落ちるのは早かった。
俺は女と付き合った。
どうやらお金持ちだったらしく、貢いでくれた。
欲しい物はなんでも買ってくれたし、お金もいくらでもくれた。
仕事は辞め、しばらく経って女の金で会社を設立した。
企業した後はすぐに上手くいった。
最近では女優としてテレビに出始めた元カノからアプローチをかけられている。
女とは別れてそっちと付き合おうと思っている。

時は経ち~現在~

夜の街はあの時の様にカップル達で賑わっている。
しばらく歩いていると後ろから、

「おにーさん」

と声をかけてきた。
振り返るとそこにはさきがいた。
さきは驚いた表情で言った。

「久しぶりだね、大分変わったね」

そう言うさきの方が見た目が大分変わっていた。
顔はこけて、体は痩せ細っていたが間違えるはずもない。

「誰かさんのお陰でな」

俺はそう皮肉っぽく返すと、さきは悲しそうな顔をしていた。
しかしそんな事は気にしない。

「私が紹介した子とは上手くいかなかった?」

久しぶりに会ったと思ったらまた違う女の話か。
俺は深く頷いた。
続けてさきはこう言った。

「今は女優と付き合ってるんだってね」

ニュースでも見て知ったのだろう。
俺はもう一度頷いた後に、

「会社の宣伝にもなるからな」

そう言った。これは事実だし本心だ。
するとさきは悲しそうな目をしながら言った。

「あの子だけはだめだよ」

今さら何なんだ、お前はより戻せって言ってただろ。
心の中でそう思いながら、

「もう金なら振り込んだんだから、お前の言うこと聞く必要ないだろ」

と言うと、さきは今にも泣き出しそうだった。

「そうだよね…」

さきがいたから救われたし、今の俺がいる。
これは紛れもない事実だ。
あの時の俺はさきと一緒にいれればそれで良かった。
でも今はそうは思わない、これで会うのも最後だろう。

「さき、今までありがとう」

そう言って俺は立ち去った。
さきの泣き声が聞こえたがもう後ろは振り返らない。
咲いていたマーガレットを踏み潰し俺は前へ進んだ。
おれ変われたんだ。
以前の俺はもういない。
世の中、金が全てなんだ。
これからは周りの人間を利用して生きていく。

ネカトイア 第4章 天国

「ねえ、起きて、早く起きて」

目を開くと、僕の事を美少女が必死に起こしている。これは現実なのだろうか。

「早く起きろ」

そう言ってさきに顔を叩かれた。少し痛い、やはり夢ではなかったみたいだ。机の上には現金が置いたままだ。未だに信じられない。

「早く用意して、出掛けるよ」

そう言い、さきは鞄にお金を入れた。僕は洗面所に行って顔を洗い歯を磨いて、服は昨日のスーツのままで外に出た。

「じゃあ行くよ、先にお金返しに行こっか」

僕は消費者金融を周り、借金を返済していった。
あれだけ死ぬほど働いて返せなかった借金が全て返済できた。肩の荷が降りた。
しかし、これで終わりではない。ここから始まるんだ。

「本当にありがとう、昨日は返さなくて良いって言われたけど、絶対返すね」

「だから良いって、それより今から行く所が本命だよ」

そう言うさきに連れられ向かった場所は美容室だった。

「髪の毛切るの?」

僕は不思議に思い聞いた。

「ひろが切るんだよ、ぼさぼさだし、ずっと切ってなかったでしょ」

そう言ってさきは美容室に入ると、奥にいた美容師さんの方に行き、なにやら伝えている。ここからは聞こえないが美容師さんはニヤニヤして頷いている。美容師さんがこっちに来て、

「じゃあこちらの方におかけ下さい、カットの方させて頂きますね」

と言われ、僕は席に着いた。

「じゃあ近くのカフェで待ってるから、終わったら連絡してね」

さきはそう言って出ていった。僕は美容室に来たのが初めてだった。
いつもは近くの床屋で1000円カットして貰っていたぐらい、髪の毛に関して無頓着だった。なんとなく、さきは僕が初めてな事を分かっていたのだろう。店員さんと話して髪型などを決めていてくれたみたいだ。
そして時間が立ち、どうやら終わったみたいだ。
セットまでしていてくれて、自分でも見違えた。
さきに連絡すると外で待っていてくれたみたいで、外に出ると、

「すごくかっこいいじゃん」

僕は嬉しかった。自分に少し自信が持てた気がした。

「じゃあ次の所行くよ」

と言われ、向かった先はアパレルショップだった。
実は僕はこういった所に来るのも初めてだった。
小さい時から親が買ってきた服や近所の子のお下がり、父親のお下がりなどを着ていたからだ。
そこでもさきはいくつか服を持ってきて、それらの服を試着した。

「うん、やっぱり似合うしかっこいい、ひろってスタイルいいね」

そう言って、さきはそのまま服を何着レジに持って行った。
流石になにからなにまでさきにしてもらいすぎだ。

「こんなに買ってもらって申し訳ないよ」

しかし、さきは優しい表情でこう言った。

「私からの誕生日プレゼントだよ、最後にこれ」

そう言って渡された物はライラックの香りの香水だった。

「ひろはこれから人生変えていくんだから、女の子にモテモテの大金持ちになるんだから」

もう既に人生は変えてもらった。
僕にはそんな生活は無理だし必要ない、普通の生活で十分だと伝えると、

「無理じゃない、私がついているんだから大丈夫」

僕はこの時さきは冗談で言っているんだと思っていた。
でもこの日、自分に少し自信がついたのは事実だ。

数日後、さきは僕に女の子の扱い方から、落とすための仕草、言動、様々な事を教えてくれた。
そして、さきは手始めに一人ナンパして成功してくるように言った。

「絶対無理だよ」

「さっき教えた事を実践すれば余裕よ。一番大事なのは自信を持つこと」

僕なんて女の子に告白された事なんて一回もないのに、余裕な訳がない。
そう思い私は嫌な顔をしていると、

「私の言うことなんでも聞くって言ったでしょ」

そう言われると何も返せない。
僕達二人は人通りの多い繁華街へと向かった。
人通りの多い所に着くとさきは僕から離れ、遠くから見ているようだ。
人がたくさん通るが、どうしても声をかけるとなると震える。
そうこうしていると時間だけが過ぎていく。
僕はなんとか勇気を出して大人しそうな一人で歩いている女の子を見つけ、

「あ、あの、おねーさん!」

「どうしました?」

驚いた表情でこちらを見つめている。
そこからはなんとか落ち着いて、さきに教えられた事を一つ一つ試してみた。
するとお茶には行けなかったが、連絡先交換出来たのだ。
僕は自信がついた。
そこから二人目に声をかけるまでに時間はかからなかった。
二人目の子とはそのままお茶をした。
数時間話した後、お会計に向かったのだが、僕は大事なことを忘れていた。お茶までいけるとは思っていなかったから、お金を持ってきていなかった。冷や汗が止まらない。
しかし女の子から、

「今日は楽しかったから、私が奢るよ、また遊んでね」

と言われたのだ。
私は笑顔でありがとうと深々と頭を下げた。
ナンパに成功した上に女の子に奢ってもらったという事実が私にとって、凄く自信になった。
そしてさきと合流し、家に帰った。
そういえば、玄関の花がいつの間にかマーガレットに変わっていた。
部屋に入りソファーに座ると、

「おつかれえ、どーだった?」

「あんなに上手く行くとは思わなかった」

「私の事信じてなかったの?」

実際こんなに上手く行くなんて全く思っていなかった。
さきは本当に僕の事を変えようとしてくれているみたいだ。

「自信がついたよ、ありがとう」

さきは少し嬉しそうな表情だった。
これで終わりだと思っていた。
もう十分だ。さきには普通の生活も自信も貰った。
これ以上なにも変わらなくていい。
しかしさきは少し家を出た後、帰ってくるなりこう言った。

さき「元カノとより戻そうよ」

ネカトイア 第3章 出会い

クリスマスで夜の街は普段より賑やかでキラキラしている。
一人で歩いているのは僕くらいで、周りのカップルは皆幸せそうだ。
僕はなんでもない存在、僕が死んでも誰も何とも思わないんだろうな。ニュースにはなるのかな。
そんな事を考えているうちにお店に着いた。
お店に入ると、静かだった。
そしてオーナーがいたので謝ると、

「お疲れ様、これ先月分の給料」
「もう来なくて良いから、寮の鍵も返して」

と言われ、先月分のお給料を渡された。
しかし僕は落ち着いていた。
なぜなら明日死ぬからだ。
そのままお店を出て最後の晩餐は何にしようかな。
など考えて歩いていた。
すると、

「おにーさん!」

僕は咄嗟の事でとても驚いた。ふと声の方を見るとそこにはとても可愛らしい女の子がいた。

「おにーさん、びっくりしすぎ」

その子は笑顔でそう言った。続けて、

「おにーさん、ご飯奢ってよ」

普段なら断っている所だが、最後くらい人の役にたって死のうと、それにクリスマスの夜に女の子とご飯に行って後、死ぬのもありだなと思い、

「いいよ、なに食べたい?」

と言った。

「え、良いの?おにーさん優しい!お寿司がいい!」

そう言った彼女の顔はとても可愛らしかった。
こうして僕達はお寿司屋さんに向かった。
道中話を聞くと、彼女の名前は【さき】と言い、一個上らしく、独り暮らしをしているが、仕事はしていないらしい。どうやって生計を立てているのかは分からないが、こうやっていつもご飯を食べさせてもらっているらしい。
話している間にお寿司屋さんについたみたいだ。
なんとも高そうなお寿司さんの前で、

「ここでもいい?」

「どこでもいいよ」


そう言うと僕達は店に入った。メニューはなく値段も書いていなかった。このようなお店に入るのは始めてだ。
僕が店内を見渡していると、彼女は言った。

「ここ来るの久しぶりだあ、いっぱい食べてもいい?」

給料で足りるかどうか心配だったが僕は、

「いいよ」

と言った。

「おにーさんお金持ちなの?」

彼女は不思議そうにこちらを見ている。
そうこうしていると、さきは慣れた感じで注目をしていく。
僕も同じ物を頼んだ。
食べ終わり、お会計をすると六万円だった。
僕は安いと思ってしまった。
給料全部を使いきるつもりでいたからだ。
あんなに欲しかったお金が死ぬと分かったらどうでもいいただの紙切れだ。
残りのお金どうしようかななどと考えて店を出た。
店を出るとさきは深々とお辞儀をして言った

「ごちそーさまでした!」

なんとも礼儀正しい子だ。

「気をつけて帰ってね」

と言うと、さきは驚いた表情で、

「おにーさん、本当に男?」

と、また不思議そうに僕の顔を見ている。

「男だし、それにお兄さんお兄さんって一個下だよ」

さきはさらに驚いたようだ。

「え?そーなの?誕生日いつ?」

「明日だけど」

「え、おめでとう!」

「まだだよ」

「あと一時間じゃん」

僕は久しぶりに笑った。どうやらさきはご飯だけですぐ帰ろうとした人が初めてだったらしく、驚いていたみたいだ。
それに年下だとは思わなかったらしく、興味が沸いたのか、

「ぼくちゃん、この後予定あるの?」

「いきなり僕ちゃん呼びに変えるなよ、ないけど」

私はついついないと言ってしまった。

「じゃあ家こない?クリスマスだし一緒に過ごそうよ」

「でも、この後…」

僕が言おうすると、

「黙っておねーさんについてきなさい」

そう言われて、言うとおりに着いていった。
さきが途中コンビニに寄っている時に、自分の人生死ぬときまで情けないなと思ったが。本当はこの時少しでも長く生きたかったのかもしれない。
さきがコンビニから出てきた。

「おかえり、なに買ったの?」

「ないしょ」

そう言い、しばらく歩いているとさきは立ち止まった。
目の前を見ると高級タワーマンションではないか、
僕が驚いていると、

「ついたよ」

と言い厳重そうなオートロックの扉を開け中に入っていく。中に入ると、まるでホテルのロビーみたいでコンシェルジュもいる。エレベーターもカードキーが必要みたいだ。
そしてエレベーターで上がって着いたのはなんと32階であった。
そのままさきに着いていき部屋に入った。
部屋の中はいたってシンプルな感じだった、なんと言うか生活に必要な物以外何もない部屋だった。
玄関にはピンク色の小さな可愛らしい花が飾られていた。
後で知ったがシレネと言う花らしい。
中に通されさきはソファーに座り、僕がぼーっと突っ立っていると、隣に座れとソファーを叩いていた。隣に座ると、

「目瞑って」

僕は言われるがままに目を瞑る。
しばらくして、

「開けていいよ」

目を開けるとそこには、小さなショートケーキが置いてあった。

「誕生日おめでとう」

その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れでた。

「どうしたの?大丈夫?ケーキ嫌いだった?ごめんね、こんなので」

僕は泣きながら必死に首を横に振った。
大丈夫と言いたいが声が出ない、涙が止まらない。
そんな僕をさきは優しく包み込んでくれた。
しばらくするとさきが何かを察したのか優しく、

「私でよければ聞くよ」

と言ってくれた。
僕はなにかから解放されたかのように、今までの事と今日死ぬつもりでいた事を全て話した。
本当は死にたくなかった。
まだまだ生きたかった。
やりたいことがまだまだあった。
誰かに話して楽になりたかった。
誰かに手を差し伸べてほしかった。
全て吐き出した後、さきはこう言った。

「偉いね、今まで一人で頑張ったね」

その言葉で何かが救われた気がした。

その後にちょっと待っててと言われ、待っていると僕は驚きのあまり目を疑った。
さきは見たこともないような札束を持ってきて、

「借金って、これだけで足りる?」

僕はしばらく固まって、言葉が出なかった。
さきが持ってきたお金があれば借金を全額返済しても、お釣りが返ってくる。

「こんなお金どうやって…」

「これあげるから、もう死ぬとか言わないで」

僕は何も返せなかった。
このお金があればやり直せる。喉から手が出るほどほしい。
しかし本当に受け取った良いのだろうか。
しばらく考えて、僕は受け取った。

「ありがとう!これから頑張って働いて絶対返していく」

「そんなの良いから、これから私の言う事を聞いてくれない?」

僕は何を言われるのか少し怖くなった。
臓器を売ってほしいとかそんなのだろうか。
それでも仕方ない、元々死ぬつもりだったんだ。
最後に話を聞いてくれただけでも満足だ。

「じゃあまずは今日私と出掛けて!」

「え?」

僕は驚いた。
聞き間違いかと思い、僕が固まっているとさきは、

「明日出掛けるんだから、早くケーキ食べて、歯磨いて寝よ」

僕はその日、久しぶりにぐっすりと眠れた気がする。